冬はスキンケア、リップクリーム、ハンドクリームと保湿するのが忙しい足立慶友眼科の視能訓練士☺︎です。暖房などによってお肌だけでなく、目の乾燥も気になる方は多いのではないでしょうか。今回は目の乾き『ドライアイ』についてお話しします。
ドライアイとはどんな病気?
涙の出る量が減ったり、涙の質が悪くなることにより様々な目の症状が生じる病気です。
~ドライアイの主な症状~
・目の乾き、かすみ、痛み
・涙がでる
・ゴロゴロ感
・充血
・眼精疲労
涙の構造と働きについて
まず、涙は一体何かと言うと『まぶたの周りの毛細血管から溢れ出た血液のうち、赤血球・白血球・血小板が涙腺を通れず、液体成分である血漿がにじみ出た体液』です。目の表面(角膜、黒目の部分)を覆うことで乾燥から目を守り、ホコリなどの異物が混入すれば洗浄し、細菌などの侵入も防ぎます。そして、目の表面の組織に、酸素や栄養を供給する働きもしています。次に涙の構造について説明します。涙は油層と液層で構成されます。油層は、涙を覆い水分の蒸発を防いでいます。この油はまぶたにあるマイボーム腺から分泌された後、まつ毛の生え際の内側にある小さな穴『マイボーム腺の開口部』から出てきます。マイボーム腺の開口部が詰まってしまうと、涙が蒸発しやすくなったり、霰粒腫(まぶたにしこりができた状態)になったりします。またマイボーム腺が正常に機能しなくなり、油が不足した状態をMGD(マイボーム腺機能不全)といい、ドライアイを引き起こす可能性があります。液層は、水分とムチンで構成されており、涙の9割以上を占めています。外気から取り込んだ酸素や栄養を目に与える働きをしています。涙の水分は上まぶたの内側にある『涙腺』から分泌された後、目の表面を潤して、上下まぶたの鼻側にある小さな穴『涙点』に入り込み鼻腔へ流れていきます。ムチンは粘り気のある物質で、結膜(白目とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜)の杯細胞(ゴブレット細胞)から分泌される分泌型ムチンと、角膜上皮(黒目の部分を覆う組織の最外層を構成する細胞)で形成される膜型ムチンがあります。分泌型ムチンは、液層内に溶けて、目の表面に水分をとどまらせる保水効果をもたらし、膜型ムチンは本来水をはじく性質の角膜表面に、水を付着しやすくする水ぬれ性を維持することによって、涙の安定性に重要な働きをしています。
油層(マイボーム腺から分泌される油)
→水分の蒸発を防ぐ
液層(水分+ムチン)
→外気から取り込んだ酸素や栄養を目に与える
⋆⸜ Question ⸝⋆
外気中の酸素が涙に含まれて、目の表面の組織に酸素を供給するとお話ししました。それでは寝ている間、酸素はどこからもらうのでしょうか? →答えは・・・
寝ている間は、上まぶた裏の血管に含まれる酸素を、涙を介してもらいます。ちなみに酸素の量は、起きているときに供給される1/3程と言われていますので、コンタクトレンズを使用している方は、必ず外してから寝るようにしましょう。
ドライアイの原因と対策
① VDT作業(スマホ・パソコン・タブレット等)
通常3秒に1回瞬きをしますが、VDT作業では画面を凝視するため瞬きの回数が少なくなります。瞬きが減ると涙が十分に行き渡らなくなるため、目が乾燥して目の表面に傷がつきやすくなるため、意識的に瞬きをするようにしましょう。そして適度に休憩を入れ、長時間の連続使用を控えることや、モニター画面を目線より低い位置にすることで、目を大きく見開くことがなく乾燥を防ぐことができます。
② エアコン
エアコンの風が直接顔に当たると目が乾燥しますし、低湿度・低温では涙が蒸発しやすくなります。エアコンの風向きを調整したり、加湿器を使用するなどして目の保湿を心がけましょう。
③ コンタクトレンズ
コンタクトレンズをつけると涙の面積が減ることや、レンズに水分を多く含むコンタクトレンズでは、失った水分を涙で補うために、目が乾燥しやすくなります。角膜には目の表面の感覚を脳に伝える神経(三叉神経第一枝)が存在しています。コンタクトレンズで角膜を覆うことで神経の感度が鈍くなることや、瞬きが不完全になることで、涙の分泌が低下します。またレンズの汚れや傷が涙の膜を不安定にしたり、ムチン分泌を低下させることもあります。2weekなどのレンズのケアをしながら使い続けるタイプは、涙を通してたんぱく質や脂質汚れが蓄積されやすいとされています。正しいケアと使用期間を守って使用するか、1日使い捨てタイプを検討することもおすすめです。コンタクトレンズの種類もたくさんありますので、どれにしようか迷っている方はぜひ当院にご相談ください。
④ 加齢に伴うもの
分泌される涙が少なくなり、涙の蒸発を防ぐ油層も薄くため、涙の安定性が低下します。
⑤ ストレスや自律神経系の乱れ
涙は副交感神経に支配されています。交感神経が優位のストレスなどによる緊張状態では、涙の分泌量が減ってしまいます。目を休めたり、休息を取るように心がけましょう。自律神経を整える方法として、目を温めることが効果的であることが分かってきました。血流が良くなり筋肉の緊張がほぐれるため、眼精疲労改善にも効果的ですし、まぶたが温まるとマイボーム腺から油が出やすくなるためMGDの改善も期待できます。
⑥ アイメイク
アイメイクをすると、涙の蒸発を防ぐ油が分泌されるマイボーム腺の出口が詰まりやすくなりますので、注意しましょう。特に気をつけた方がいいアイメイクは、インライン(目の粘膜部分にアイラインをひく)と、まつ毛の根元から皮膚の部分までマスカラをつけることです。
⑦ 全身疾患
シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、リウマチ など
治療
・点眼治療
商品名 | 効果 |
ヒアレイン など | 涙の量を改善(目の表面に涙を安定させる) |
人口涙液(ソフトサンティアなど) | 涙の量を改善(涙に似た成分で、涙を補充する) |
ジクアス など | 涙の質を改善(ムチンと水分の分泌促進) |
ムコスタ点眼液UD2% など | 涙の質を改善(ムチン分泌促進) |
・涙点プラグ:涙の排出口である涙点に栓をして、涙を目の表面に留める治療
・生活環境に応じた対策(保湿する、目を休めるなど)
最後に
ドライアイはさまざまな原因により起こるため、ご自身の生活環境に合わせて原因となりそうなものを対処していくことが大切です。またドライアイでは黒目に傷がつくこともあるため、眼科で目の検査をすることをおすすめします。乾きやその他の目の気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。